落語のどこが面白いの?
もはや現実と区別できない程にリアルなCG・アニメーション映画が溢れる現代で、着物のおじさんが座って一人で話すだけの落語のどこが面白いの?
落語初心者はみんなそう言います。
すると落語家はこんな返しをしてきます。
「はい、そこのあなたとあなた。
目を閉じて世界一の美女を思い浮かべてください。」
「二人が想像した美女は同じ顔でしたか?
違いますよね?これが落語にできて映画にできない事です」
「声の情報だけだからこそ、あなただけの”最高の映像”を頭の中に思い描ける」
「落語家とお客さんの”共同作業で完成”させる」
「だから知識と想像力が豊かで理解力がある人、つまり頭が良い人ほど楽しめる」
「逆に、バカには楽しめないのが落語です」
「あなたは落語を楽しめる人ですよね?」
落語入門
自分が大好きでやり込んでいるゲームに対して、チュートリアルすらやった事ない人が「つまらなそう」って言ってきたらイヤですよね。
経験してないのに否定すんなよって。
何にだって「興味→初体験→慣れ→練習→上達→楽しい」の段階は必要です。
落語のチュートリアルにオススメなのが『タイガー&ドラゴン』です。
脚本は宮藤官九郎。
長瀬智也が演じるアホのヤクザが、知識ゼロのまま落語家に弟子入りする物語。
クドカン×長瀬は平成の最強コンビなので間違いない。
ちなみに脇役で若い頃の星野源が坊主頭で出ています。
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これを観ても落語の面白さが分からなければ諦めましょう。
落語のジャンル
普通、落語といえば古典落語を指します。
新作落語というのもありますが、世間に浸透しないまま消えてしまうことがほとんどです。
古典落語のジャンルは大きく分けて3つ。
- 笑える『滑稽話』
- 泣かせる『人情噺』
- 怖がらせる『怪談話』
なので、笑いたい気分なのに怪談話が得意な人の寄席に行ってしまった…なんてことが無いように、事前の準備が必要です。
ワンピースに出てくる落語
”鼻唄三丁矢筈斬り”は『首提灯』
これは首提灯が元ネタです。
「あらすじ」
酔っ払いの男が夜道で侍に出会い道を聞かれる。
侍の言葉が方言混じりだったので「この田舎侍が」などと暴言を吐き、しまいにはタンを吐きかけて侍を激怒させてしまう。
怒った侍は、目にも留まらぬ居合い抜きで酔っ払いの首を斬り、その場を立ち去る
酔っ払いは斬られたことに気付かずに酒屋を目指して歩き出す。
しばらく歩くと徐々に異変が。
喉から息が漏れたり血が出てきたりして やっと首を斬られたことに気付く。
こりゃ大変だ 早く接着剤でくっつけないと。
ありゃりゃ前方で火事だ、人混みだ。
ぶつかって首が落ちたら大変だ。
そうだ、落とさないように提灯みたいに手で持とう。
「はいはい、ちょっとごめんよ、急いでるから通してよ」
演目 | ジャンル | |
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”珍しい種族を見世物に”は『一眼国』
腕の関節の数が違う種族を自分の国で見世物にして儲けようとする両者。
これは一眼国が元ネタです。
「あらすじ」
日本全国のお経を集める旅人(六部)が、テキ屋の親方の家に泊めて貰うことになった。
テキ屋の親方は「何か珍しい生き物を捕まえて見世物にして儲けたい」と考えていた。
全国を旅しているお前なら、何か良い情報を知ってるんじゃないかと尋ねる。
すると旅人は「ここにくる途中の里で一つ目の子供に声を掛けられて驚いて走って逃げてきた」と話した。
翌朝、親方はさっそく一つ目の子供いたという里に向かって旅に出た。
捕まえて持ち帰り見世物にして儲ける為だ。
しかしなかなか見つからない。
木陰でタバコに火を付けて休憩していると「おじさん、おじさん」と声を掛けられた。
振り返るとそこには一つ目の女の子が居た。
大喜びで子供を捕まえて帰ろうとすると「キャア、助けて〜」と子供が叫ぶ。
するとゾロゾロと一つ目の大人達に囲まれてしまう。
「この誘拐犯め、捕まえろ!」
一つ目の大人たちに捕まり、一つ目の人間ばかりの里に連れて行かれる。
「なんだコイツ、目が2つあるぞ。珍しいから見世物にして儲けよう」
演目 | ジャンル | |
一眼国 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”萵苣は腹に障る”は『夏の医者』
萵苣(チシャ)はレタスのこと。
錦えもんとカン十郎の再会時のやり取りは夏の医者が元ネタです。
「あらすじ」
ある田舎の村。真夏の昼間に一人の農夫が倒れた。
しかし村に医者はなく、農夫の息子が山を超えた隣の村まで医者を迎えに行くことになった。
息子は休みなく走って山を越え、隣の村の医者の家まで辿り着く。
事情を聞いた医者はすぐに食あたりが原因だと見当を付け、加えてこう言った。
「夏の萵苣は腹に障る」(夏のレタスは食あたりを起こす)
薬箱を持った医者と息子は急いで村に向かった。
途中、歩き疲れた二人は山の中で休憩していると、突然あたりが真っ暗になった。
「しまった。この山には人を食うウワバミ(大蛇)が出る。今ワシらはウワバミに丸呑みにされたんじゃ」
消化される前に急いで脱出しようと、医者は薬箱から下剤を取り出しウワバミの腹の中に撒き散らした。
途端にウワバミは苦しみだし、肛門から二人を排出した。
その後、無事に山を越えて倒れた農夫の元に到着した二人。
しかし医者の手には薬箱がない。
「しまった!ウワバミの腹の中に忘れてきた」
医者は急いで山に戻り、ぐったりしているウワバミを見つけて話しかけた。
「もう一度ワシを飲み込んでくれ」
するとウワバミは「イヤだ」と断り、加えてこう言った。
「夏の医者は腹に障る」
萵苣(チシャ)と医者(イシャ)をかけたダジャレです。
演目 | ジャンル | |
夏の医者 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”抜け雀”は『抜け雀』
これはそのまんま抜け雀が元ネタです。
この話はオチのダジャレの意味がわからないと理解できない話です。
- カゴ描き→雀が休めるように止まり木の付いた鳥カゴの絵を描き足した人の事。
- 駕籠(かご)かき→人を乗せたかごを担いで走る仕事。
重労働のため身分の低い者しかやらない。また、客の足元を見て料金を釣り上げたりなど、嫌われ者が多い職業。
つまり、息子が何かしたせいで親が「駕籠かき」の仕事をしなきゃいけなくなるというのが、どれほど親不孝なことか。
という意味が込められたオチです。
「あらすじ」
さびれた宿屋を経営する貧乏夫婦のところに、汚い着物の太った男が「泊まってやる」と偉そうにやってきた。
その男は旅館のツケで大量の酒を飲み続けて一週間が経った。
酒代だけでも先に払って欲しい夫婦が男に請求すると「金は今は無い」と偉そうに答えた。
続けて「男の商売は絵師なので担保として屏風に絵を描いてやる」と言い、雀を5羽描いた。
「帰りに寄って金を払うので、それまでこの絵は売ってはならぬ」と言い残して宿を後にした。
宿代も酒代も踏み倒された。とんでもない客を泊めてしまったと夫婦がぼやいていると、客室から雀の鳴き声が聞こえる。
夫婦が見に行くと、雀が描かれたはずの屏風は真っ白。
部屋の中には絵の雀が歩き回っていた。
夫婦が「あっ」と驚くと、雀は屏風の中に飛び込み絵に戻った。
それから毎日、朝になると絵から抜け出し遊ぶ雀。
それが評判を呼び、見物客が押し寄せ、見物料や宿泊代で大儲けした夫婦。
しかし、なぜか日に日に雀の元気がなくなっていく
そんなある日、一人の老人がやってきて雀を描いた男を知っていると言い出した。
さらに「未熟な絵だからもうすぐ雀は死ぬぞ」と言い出した。
亭主が理由を聞くと「屏風に描かれたのは雀だけ。止まり木がないから飛び続けて疲れて落ちる」と言い、止まり木が吊るされた鳥カゴを描き足した。
老人の言う通り、雀は止まり木で休むようになり元気になった。
老人は名前も言わずに去った。
それからますます評判が上がり、絵を売って欲しいと言う金持ちが現れる。
提示された金額は腰を抜かすほどの大金だったが、亭主は絵描きの男との約束を守り売らなかった。
しばらくすると絵描きの男がキチンとした格好でツケを払いに戻ってきた。
雀の絵のおかげで大儲けした亭主は男をもてなし、鳥カゴを描き足した老人の話をした。
すると絵描きの男は二階に駆け上がり、屏風の前にひれ伏しこう言った
「いつもながらご壮健で。不幸の段、お許しください」
亭主が話を聞くと、鳥カゴを描いた老人は男の父親だという。
亭主は喜び
「親子二代で名人てなぁ、めでたいですな」と言うと
絵描きは
「なにが、めでたいだ。おれは親不孝をした」
不思議に思った亭主は
「どうして?」と尋ねると
絵描きは
「おれは親をカゴカキにしてしまった」
演目 | ジャンル | |
抜け雀 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”ガマの油”は『ガマの油』
これもそのままガマの油が元ネタです。
「あらすじ」
口の旨さと手品を使って”ガマの油”を万能薬のように見せかけて売り捌く商人。
儲けた金で酒を飲みベロベロに酔っ払い酒屋を後にすると、人だかりを見つける。
もう一儲けできる思い、いつものように口上を始めるが、酔ってるせいで言ってる事がメチャクチャに。
刀にトリックも仕掛け忘れ、切れないはずの刀で自分の腕を切ってしまう。
それを見た客が「ガマの油で傷は簡単に塞がるんだから塗ればいいだろ?」とアドバイス。
もちろん万能薬だなんて嘘なので傷は塞がらない。
オチは「誰かこの中で、血止めの薬を持ってる人は居ませんか?」
演目 | ジャンル | |
ガマの油 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”邪眼草”は『蛇含草』
”邪含草”は蛇含草が元ネタです。
このネタは複雑で、いろんなバージョンにアレンジされていて、一番わかりやすいのはそば清と言う演目です。
「あらすじ」
ある山に、人間を丸呑みして腹が膨れて苦しそうなウワバミがいた。
そこに一人の男が通りかかり、隠れてウワバミの様子を見ていた。
ウワバミがある植物を飲み込むと、膨れていた腹がへこみ颯爽と茂みに消えていった。
男はその植物を”超強力な消化促進効果”があると思いこみ持ち帰った。
しかし、その植物は人間だけを溶かす草だった。
演目 | ジャンル | |
そば清 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”頭山”は『頭山』
九里の”頭山”はそのまま頭山が元ネタです。
この話も上級者向けで、常識とかそういうのを全て無視して想像力をフルに活用する必要があります。
「あらすじ」
短気な男がサクランボを種ごと食べたら頭から芽が出て大きな桜の木に成長してしまう。
立派な桜の木に大喜びの近所の人たちは、頭山と名付けて花見で大騒ぎ。
うるさくてイライラした短気な男は、自分の頭の桜の木を引っこ抜いてしまい、頭に大きな穴が空いた。
すると今後はその大穴に雨水が溜まって池になり、近所の人たちは魚釣りを楽しんだ。
頭の中で釣りをするモンだから、釣り針が男のまぶたや鼻の穴に引っかかる。
ブチギレた男は池に身投げして自殺してしまう。
その池はなんと自分の頭にできた池だった。
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頭山 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”らくだ”は『らくだ』
”らくだ”はそのままらくだが元ネタです。
「あらすじ」
とある長屋に「ラクダ」と呼ばれる嫌われ者の乱暴者のヤクザが住んでいた。
その兄貴分である「丁目の半次」がラクダを訪ねてやって来たが、ラクダはフグに当たって死んでいた。
ラクダの葬儀を出してやりたいが金が無い半次。
そこにたまたま通りかかった不用品買取業者の男が半次に捕まる。
ラクダの家のモノを高く買い取れと脅すが、価値のある物は何も無い。
逃げようとする男を引き止め、長屋の大家から香典を集めてくるように言い付ける半次。
気の弱い業者の男は言う通りにする。
しかし、生前のラクダにさんざん迷惑を掛けられていた大家が香典なんか出すわけが無い。
そこで半次は、ラクダの死体を担いで直接大家の元へ。
大家の目の前でラクダの死体を担いでダンスをして見せる。
その不気味さと恐怖から大家は金を出した。
同じ手口で次々と周辺の住民を脅して金を集める半次と、逃げられない業者の男。
開き直った業者の男は集めた香典で買った酒をガブガブ飲んだ。
すると、性格が反転し気弱だった男がヤクザの半次に説教をかまし立場が逆転してしまう。
演目 | ジャンル | |
らくだ | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”一度狐”は『七度狐』
”一度狐”は七度狐が元ネタです。
「あらすじ」
伊勢神宮にお参りに向かう旅人の”喜六”と”清八”が、知らないうちに狐の恨みを買っていた。
その狐とは「一度恨みを抱いたら7倍返しでやり返される」と恐れられる妖狐・七度狐だった。
二人が旅の行く先々で狐に騙され続ける滑稽話です。
演目 | ジャンル | |
七度狐 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
”傳ジローの鍋”は『壺算』
”傳ジローが鍋を買う場面”は壺算が元ネタです。
「あらすじ」
100リットルが入る壺を安く買いたい吉公が、値切り上手の兄貴分の長さんを頼る。
長さんはまず50リットルが入る壺を1円15銭のところ、1円に値切って購入した。
しばらく時間を空けてから店に戻った長さんは、50リットルの壺と100リットルの壺を交換して欲しいと店主に伝える。
さらに「さっきは50リットルを1円だから100リットルは2円でいいだろ」と交渉した。
本来は2円30銭のところ、30銭の値引きになる。
しかし長さんは続けて
「さっき1円は支払い済みだよな。で、この50リットルの壺を返すから合わせて2円の支払いが済んだな」
「じゃあ100リットルの壺はもらっていくぜ」
と、まんまと1円で100リットルの壺を買ってしまった。
演目 | ジャンル | |
壺算 | 滑稽話 | YouTubeで観る |
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